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中日事情あれこれ

代金回収の喜怒哀楽


 私の中国人仲間には何人か中小企業の経営者がいます。この前の10月の国慶節あたりに中国へ出張に行った際、友人のLさんはまた文句を漏らしました。「今年9月の中秋節と10月の国慶節もまた大変だったのよ!」

 Lさんの言っていることはよくわかります。代金回収のことです。中秋節と国慶節は労働者たちにとって一番楽しい祝日に違いないと思いますが、Lさんのような中小規模の経営者にとっては苦しい戦いになるのです。片方従業員たちにボーナスをあげなくてはなりません。一方では数ヶ月間の代金をお客様のご機嫌をとってなんとか回収しなくてはなりません。

 思わず5年前の2005年9月のことを思い出しました。同じ9月、同じ中秋節、同じLさんでした。当時私はまだ会社を起こしてから3ヶ月で、営業とも言えないような営業活動を続けていた中で、ある日の夕方いきなりLさんが来て、「今夜一緒に河北省の唐山に同行してくれないか。用事があるんだ。」と苦しい顔をしていました。

 よく話を聞くと、Lさんは9月にやっと上半期分の一部代金計10万元(日本円130万円、5年前の当時では相当な金額でした)の手形を入手したそうです。喜んだあまりに、銀行に現金に両替しようとした時に、銀行の担当者から(銀行のサービスも多少よくなかったと思いますが、)手形の裏に印鑑とサインを頼まれたところ、その手形は既に10社回されたことに気づきました。しかし、どの会社も裏でサインはしなかったのです。Lさんは勇気を出して右から左へ10社の順番を書き終わった瞬間に、銀行担当者から「書き間違いましたよ。10社の順番は逆ですよ。」と注意されました。「すみませんでした。興奮しすぎましたので、もう1枚書き直してもいいですか。」とお願いしたところ、「もう無理です。10社全員回してもう一度証明をいただかないと、現金をお渡しできませんよ。」ときっぱりと断られました。

 その10社といったら、東北三省2社、河北省3社、内モンゴル2社と天津3社でした。最初にその手形を出したのは河北省唐山の会社でした。ということで、その会社へお願いしてもしかしたら通じるのかもとLさんはささやかな望みを抱えました。
 あわてて当日の夜にLさんと寝台車に乗って天津経由で長距離バスに乗り換え翌日11時に唐山に着きましたが、会社にたどり着いたのが既に午後2時でした。しかし、会社にも地元の銀行にも説明し、お願いしましたが、1社ずつもう一度印鑑や説明をいただかないとできないようです。あきらめたLさんですが、その2週間後に再度唐山をはじめ、10社を一周まわり、最終的には10万元を無事に手に入れましたが、出張費用等独占状態の交通部門に約3万元を費やしたようです。

 Lさんのような代金回収に苦しんでいる経営者がいる一方、国際貿易等で活躍している友人Wさんもいます。彼曰く、「うちはほとんど外国との商売ですから、お客様の支払い方法はほとんどL/C(信用状)か前払いのT/T(電信送金)ですよ。回収リスクはほとんどありません。」

 同じ中国でビジネスをやっている仲間たちも、代金回収の喜怒哀楽は全然違いますね。その中では日本企業をターゲットにやっている企業はほとんど代金回収に難色を示したことがないように思います。また、国際貿易をやっている企業たちはほとんど銀行の担保が入っているから心配事も少ないようです。中国国内ビジネスをやっている中小企業の場合は依然として石橋をたたいてやっているようです。

 代金回収問題は外国系企業だけではなく、中国系企業も苦しんでいるので、中国に進出する際にやはりできれば中国国内の外資系企業と経験を積んでから徐々に中国系企業と取引を進めていったほうが無難だと思います。直接中国系企業と取引しようと考えている企業様は少しでも当初の進出ビジネスモデルを変えてみませんか。

  (2010年11月 株式会社ソフテック 楊)

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