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中日事情あれこれ

「すみません」って難しい


 最近上海万博の報道が非常に多いようです。

 先日テレビで中国人が歩きながら飲み物の代わりにキュウリをかじっていたシーンがクローズアップされたようです。恐らく日本人にとって大きなカルチャー・ショックでしょうね。少なくとも私の妻は「日本では考えられない」と言いました。実は私にとって非常に懐かしいもので、思わず子供の時代に仲間とキュウリ・トマトをかじりながら暑気払いした記憶を取り戻しました。

 もう1つのニュースがありました。万博のチケットを買うために、行列に割り込んだり、けんかまでして一時期大騒ぎになりました。「すみません」の一言で済むはずなのに、と日本人の方が思うかもしれませんね。

 日本人がよく口にする言葉「すみません」、この言葉は本当に大変便利です。人に物を聞く時「ちょっと、すみません」、物事をお願いする時、「すみませんが、これお願いします!」、謝罪する時「すみません・すみませんでした」などなど、一日何回くらい使っているのかなと考えてしまうくらいです。中国語の場合は、人に物を聞くとき「請問(Qingwen)」、「請+動詞(例えば、「請座(Qingzuo)」:座ってください)+一下(yixia)!」、謝罪する時「対不起(Duibuqi)」もしくは「抱歉(Baoqian)」などと言い、日本語よりは明確に言葉を使い分けていますね。中国の人がちょっとした謝罪によく使うのが「不好意思(Buhaoyisi)」です。「きまりが悪い」というのが主な意味なので、日本語のすみません・ごめんなさいとは多少ニュアンスが異なります。

 中国人は謝罪時に、「対不起(Duibuqi)」はあまり使いません(実際に私はあまり聞いたことがありません)。中国の人は「対不起(Duibuqi):すみません」と言うことは少々抵抗があるようです。というのも、中国人だけでなく西洋人にも共通しているようですが、「すみません」と謝罪することは、「自分の罪を認める」ということになるからです。日本人のように「すみません(ごめんなさい)」を連発することは、自分の過ちを認め、相手に責められてしまうことを意味します。ですから自分がそんなに悪くない場合は「対不起(Duibuqi):すみません」とはあまり言わないのです。

 日本に住んで10数年という中国出身の友人Aが先日私に話してくれました。友人Aはある日、同僚の中国出身のB氏から相談を受けました。来日してからまだ間もないB氏は、日本人上司から「あなたはどうして『すみません』と謝れないんだ」と怒鳴られたそうです。B氏の言い分は「自分がやった仕事ではないのに(B氏の同僚が担当していたらしい)、そのミスを何故自分が謝らなくてはいけないのかがわからない。悪いと思っていないのに『すみません』とは言いにくいものだ。」と友人Aに漏らしたそうです。友人Aも同様の経験をしたことがあり、「日本人は自分のミスでなくてもすみませんと謝るものだということが次第に分かってきた。それが日本人の習慣なんだとは理解しているが、やはり慣れない。いつも自分も『すみません』と言うべきか悩むよ。」と苦笑いしていました。確かに、日本人は、自分のミスでなくても「すみませんでした!」とすぐに頭を下げますよね。普段、それを至極当然と思っていますが国や文化が異なると常識も異なってきますね。

 近年、中国に進出する日系企業が増加する中、中国国内に進出する外資系企業の中で中国人スタッフの離職率が一番高いのは日系企業のようです。日系企業を離れ、欧米企業に転職をする中国人は少なくありません。中国人は日本人同様アジア人ですが、思考は欧米人に近いとも言われています。中国国内で優秀な人材を確保するために、日本のやり方を一方的に押し付けるだけでなく、中国人の思考や習慣を理解するように心がけるということは大切なことだと思います。また、お互いの文化を理解しあえるために、入社後の新人教育を通じて、お互いの文化の違いについてコミュニケーションを徹底的に実施し、事前に状況説明をしたほうが良さそうな気がいたします。日系企業の試行錯誤はまだまだ続きそうですね。

【参考】

-意見を言わない日本人、自分勝手な外国人- 職場国際化しても文化摩擦は相変わらず!

 外国人社員は日本企業のどこに魅力を感じ、何を問題点とみなしているのか。Newsweekとバイリンガル向け就職情報起業のダイジョウブ社が日本で働いた経験がある外国人を対象にした調査によると、次も日系企業で働きたいと答えた人はわずか25%。66%が日本企業以外で働くほうがいいと答えた。
 最大の理由は賃金面の不満だが、日本独特の企業風土も嫌われている。朝の体操やオフィスの掃除、社歌の斉唱、鳴り響く始業ベル。外国人に言わせれば、日本の職場は学校と同じだ。「他の国の企業へ転職したときは、檻から出た気分だった」とオーストラリア出身のあるIT(情報技術)企業のエンジニアは答えている。
 外国人の昇進を阻む見えない壁や不透明な意思決定プロセス、根強い女性蔑視の風潮がやる気や個性を失わせているという意見もあった。「時代遅れのビジネス手法に自分が洗脳され、他の企業では役に立たない人材になるかもしれないと不安になる」と、大阪の大手電子企業で働くヨーロッパ出身の社員は答えている。
 ただし、異文化摩擦の最大の原因は、今も昔もミスコミュニケーションだ。一般的な日本の職場では、見よう見まねで仕事を覚えることが重視されているが、活発な意見交換や具体的な指示がある職場環境に慣れている外国人は、自分の役割について明確な説明を望む。
 日本の出版社で働くパラグアイ出身のグラフィックデザイナー、アントニー・ブルネスは、手伝うことはないかと同僚に聞いてから退社するべきだと上司に忠告された。そんなことは考えてもみなかったから、教えてもらってよかった。一応聞いてから帰ればお互いに気分がよくいられる」
 グローバル時代の「いい会社」にまず必要なのは、そうした文化の違いを認識できる環境づくりだ。
【「Newsweek」2005.4.27 「グローバル時代のいい会社・悪い会社」より抜粋】



  (2010年6月 株式会社ソフテック 楊)

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