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中日事情あれこれ

「面子」問題とブランド意識


 中国語の「面子」は顔のことです。昔から「顔をたたいて腫れさせて太ったふりをする」(打腫臉充胖子)という諺があるように、中国人は見栄を張るところがあります。 その例として外食の場面が挙げられます。恐らく中国へいらっしゃったことのある日本人は誰でも見たことがあります。レストランでは中国人は大量の料理を注文し必ず1品2品を残すことを美徳とし、完全に食べてしまうと面子にかかわると言われます。しかも貧しいところほど大量の料理を出し、大量にお酒を飲むようにします。

 最近では、その「面子」問題はまたグレードアップされているような気がいたします。「環境問題」、「エコ意識」、「地球温暖化対策」と中国のテレビや報道で何回も見たり聞いたりしていますし、政府官僚の友人からも何回も「環境・新エネ技術を導入したい」との見解を伺ったことがありましたが、北京や上海の町を歩いたりする時、目に映っているのはほとんど排気量2000cc以上の高級外国乗用車でした。「ベンツ」、「BMW」、「AUDI」、「TOYOTA」、「NISSAN」、2400cc、2800cc、3000ccと重厚感のある外車が続々と時速20キロ以下のスピードで10車線を誇りにしている中国一の大通り「長安街」沿線を「ジョギング」していました。

 またもうひとつ面白い風景があります。ふるさとの南京の郊外では去年上海―南京間の高速新幹線(時速350キロ)建設のため、地元農家が政府から高額の補助金をいただきより遠い郊外へ立退きましたが、その補助金の用途を伺ったところ、ほとんどの農家は車を買ったそうです。買った車はなんと外車で、30万元(凡そ400万円)以上の車でした。隣が「NISSAN」だから、うちは「TOYOTA」でなくちゃ、とまた「面子」が重視されました。

 先月中国で話題になったことは「中国のGDPが今年の第2四半期で日本を超え、世界2位となった」というニュースでした。確かに一部の中国人は豊かになったようです。しかも「面子」のおかげで、エコ問題とかは気にせずにどんどんブランド意識へ走ってしまいます。

 「舶来品」に目を向けている中国人はかなりいると思います。中国のレストラン街を歩いてみても、イタリア料理、日本料理、フランス料理、タイ料理、ベトナム料理など、外国料理店はどこでも人が一杯で、また中華料理の2倍も3倍もの料金設定になっています。「一番高品質のものより一番高価格のものを求めたい(不求最好,只求最貴)」の一言は、他人に見せるところではケチることなく、十二分に見栄を張る中国人の意識を実に赤裸々に表現している名言です。

 ここで実はひとつの真実を披露したいと思います。「ブランド」って何ですかと中国人の方々に聞いてみてください。また、「日本のブランド名を挙げてみてください」と聞いた瞬間に、恐らく5つも挙げられないでしょう。挙げられたとしても結局具体的なブランド名よりも国の名前になってしまうのかもしれません。アメリカ、日本、フランス、イギリス、イタリアのいずれかになるでしょう。

 ここに絶好なチャンスがあるのです。要するに大手企業でも中小企業でも中国という新しい市場では同じスタートラインにあるということです。いくら日本で有名なブランドで、いくら売れていたとしても中国では無名なままかもしれませんし、売れる必然性がないように思います。いかにして中国人の心をつかみ、中国人の財布の紐を緩めることができるかが今後の勝負となります。
 日本の中小企業の中では地域密着型の企業が細く長く生きることができると聞いたことがありますが、中国という新しい土地でも一つのエリアを集中的に地域密着型の戦術を試してみてはいかがでしょうか。

  (2010年9月 株式会社ソフテック 楊)

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