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中日事情あれこれ

スーパーマーケットの栄枯盛衰!?


 先月お客様と一緒に北京へ行った時、お客様の北京事務所周辺環境視察ということで周りのスーパーマーケットとコンビニをご案内しました。「すごーい!ありとあらゆるものがありますね。」「全然困ってないなー!」と驚きの声でした。たまたま「あれ!?この近くに地元のコンビニと欧米系のスーパーしかないね。日本系のスーパーがあればなおよかった!」の一言もありました。

 お客様の北京事務所は北京という一説では2000万人の人口を有する大都会のど真ん中にあり、中国の心臓地帯と言われる天安門広場から2キロ西の場所にあります。その周辺のスーパーでは既にアメリカ系のウォールマートが入っています。また、コンビニでは北京物美(ウーマート、2005年に天津ダイエー12店舗を買収し、800人の従業員をそのまま吸収した)がこのエリアを占めようとしています。10年ほど前にSOGOグループがこのエリアにSOGO百貨店として進出していましたが、数年前に中国系管理会社に売却した報道があったようです。これ以外に、数年前に日本から撤退し、今後市場の急拡大が見込まれる中国に経営資源を集中させる方針であると表明していたフランス系のカルフールも北京市内を始め中国国内で店舗数を増加させています。

 この数年中国のGDPが二桁成長を続けるに連れて、庶民生活も大きな変化を見せています。10年前まで魚市場・野菜市場といった「自由市場」(露天や簡易建物の中で蝿や蚊と戦いながら買い物をしていた)に頻繁に足を運んでいた中国国民はいつの間にかスーパー、コンビニに慣れてきたような気がします。この匂いを嗅いだ外国小売業大手がいち早くも中国に進出し、外国と本土を問わず、中国のスーパーマーケット間の競争は急速に激しくなり、日本と比較すると、当面はこのような元気の良い状態が続いていくのではないかと予想できます。
 中国の諺に「30年河東、30年河西」と言いますが、世の中の物事は変わって行くものだということを指しています。中国は1978年以来ほぼ30年経ってきました。安価な世界製造工場から徐々に消費大国になりつつあります。一方では、かつて日本で栄華を極めていたダイエーが5年前に中国の企業に中国支店を買収され、SOGOもその後北京で築きあげてきた百貨店を他人に譲渡したなど全く予想もつきませんでした。2000年後に「黒船襲来か!?」などと言われて話題になったカルフールも5年前に日本市場に見切りをつけて、中国での展開を強化しました。同社が展開する戦略と日本人の国民性、習慣等が合致しなかった(市場調査不足だったのだという声も一部にはある)ことが日本市場で成功に結びつかなかったのだという見方をする人が多いようですが、中国ではその教訓を汲んだのか、目覚しい発展を見せています。
 中国では、カルフールは「家楽福(Jialefu)」と呼ばれ、日本で事業展開するよりも前から北京や上海で既に営業を開始しており、休日ともなると現地の人や外国人留学生、駐在員などで溢れていました。店舗内を見渡すと中国の人たちが好きそうな商品や中国駐在の外国人が好きそうな商品がバランスよく陳列されているし、新しい物好き、新しい物を受け入れ易いといった中国の国民性にも合致しているように思えました。更に、夫婦共働きが当たり前の中国では、週末などに大量にまとめて一度に料理を作り何回かに分けて食べるといった習慣もあるようで、大量にコストを低く販売する方式が受け入れられているのではないかと考えられます。

 それでは、日本の場合はどうでしょうか?核家族化が進み、流通や交通網が発達し、魚や野菜など新鮮な物を欲しい時に欲しい量だけ購入できる日本の一般家庭では、大量購入して大量に調理するなどといった習慣があまりないように見受けられます。  もしかすると、カルフールやウォールマートの経営陣達は中国の文化・習慣になじんでいるのかもしれませんね。やはり中国と日本では文化、習慣は大きく異なるので、中国へ進出したいと考えている日本企業もこのことを肝に銘じておく必要があるでしょう。  当面日系小売業では、スーパーではイトーヨーカドーが北京、イオングループ(ジャスコ)が青島、コンビニではローソン、ファミリマートがそれぞれ上海に店舗を運営し、ある程度人気を呼んでいますが、中国という巨大な人口を持つ「スーパーマーケット(超級市場)」では隅の一角に過ぎないように見えます。

 日本商品の巧みや日本サービス業のサービスマインドは世界一だと、中国人によく知られているはずです。したがって、今後中国の二等都市(北京、上海、広州以外の大都市)に目を向け、日系小売業のサービス精神や日本のすばらしい商品を中国の一般庶民により多く受け入れていただく努力が必要になってくるのではないかと思います。そこから日本経済の活力を見出すことができると信じています。

  (2010年7月 株式会社ソフテック 楊)

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